梨状筋症候群（座骨神経痛）が改善
東京都港区 鍼灸指圧ねこまち治療院 安彦伶哥 院長
今年になって、自宅でリモートワークを原因とする腰痛や肩凝り、眼精疲労の方が増えています。もともと仕事をする環境ではない自宅でいきなり仕事をするようになったため、机の高さが合わなかったり、長時間座るのに適していない椅子を使ったり、変な姿勢で仕事をする人が多いようです。
当院にもパソコンが目の高さと合わないことによる眼精疲労からくる首や肩の凝り、また腰痛全般でいらっしゃる方が増えています。
今回は、そういう方たちの中から梨状筋症候群が週１回の施術４回でほとんど改善されたという５０代の女性の事例を紹介したいと思います。
彼女は今年１０月頃、腰痛と股関節の痛みを訴えて来院されました。１年間ぐらい痛かったとおっしゃるのですが、よくお話を聞いてみると、春以降、新型コロナで会社のお仕事がリモートワークになり、会社ではなく自宅の椅子に長時間座るようになったのが悪化の原因だと思われました。そして症状については梨状筋症候群だろうと判断しました。
座骨神経痛というのは病名ではなく総称で、腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどがよく知られていますが、意外と梨状筋症候群の方が多いのです。
梨状筋というのはお尻の奥を横切るようについている筋肉で、その中を座骨神経が通っています。ずっと悪い姿勢で座っていると梨状筋が硬くなり、座骨神経を圧迫するため痛みが起こります。これが梨状筋症候群です。あまり注目していない先生も少なくないようですが、私の師事している長田裕先生が「腰痛とされている患者さんはかなりな割合で梨状筋症候群だ」とおっしゃっているため、私は以前から注目していました。「チクチク療法」の梨状筋のポイントがあり、梨状筋を緩めるストレッチなどもあるのですが、梨状筋症候群と思われる方はそういった施術や実践で改善していきます。
施術により痛みが治まる
施術については、まずビワ温灸を当て、それから刺さない鍼であるチクチク療法を行います。さらに癒着している筋肉に対して、押すのではなく剥がすような独自の施術、この三つを行いました。ビワ温灸は、まずは基本のツボを左右バランスよく全体に当てます。さらに右のほうが痛いということでしたので、実際に痛いところ、右側外側の股関節の付け根あたりから右側の腰・もも・臀部、それから腰の下のところを中心に当てていきました。
以上のような内容で施術したところ、１回目の施術でほとんど痛みがなくなりました。ただ、１週間ほどすると以前ほどひどくはないものの痛みが戻ってきたため、再度いらっしゃって施術。また１週間経つと痛みが戻ってきたので来院。そのようにして週１回、４回続けて通われるとほぼ痛みがなくなりました。
当院ではペインスケール（痛みスケール）を書いていただき、痛みが視覚化できるよう数値化していきます。
この人の場合、最初来たときは慢性痛ということでペインスケール１０のうち５だったのが、１回目の施術が終わった時点で０になりました。
２回目に来たときは４だったのが、帰るときは０。
３回目は来たときが３で、帰りは０。
４回目は来たときが２で、帰りが０。
それでほとんど痛みがなくなるという、絵に描いたようにきれいに治っていきました。ちょっと珍しい症例だと思います。
「ペットボトル温灸」もお勧め
また、１回目の施術の後、徐々に痛みが戻ってきたと相談された時に、自宅でできるセルフケアとして、腰を温めることをお勧めしました。彼女は電気あんかを持っているということでしたので、それを使って寝る前に温めるようにしたら調子がよくなったということでした。因みに、当院では何も持っていない方でもできる簡単な方法として、ペットボトル温灸をお勧めしています。市販の温かいお茶などのペットボトルを利用し、火傷しない程度の熱さのお湯を入れて体の冷えたところに当てます。いわば簡易的な湯たんぽのようなものです。最近は電子レンジにかけられるペットボトルもあるので便利です。
肩凝りの方は肩に当ててもいいのですが、特にお腹と腰がお勧めです。主要なツボが多い場所なので、ほとんどの疾患に効果があります。
また、足がむくんだり痛いという方の場合、痛いところをコロコロ転がすようにしていただいたり、膝の裏に挟んだりすると気持ちがいいですね。肩凝りの方は、首の後ろにはさんで、グーッと少し上を見るようにすると、ちょうどいい具合に首のツボが刺激されます。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今後もリモートワークによる腰痛や肩凝り、眼精疲労の方は多くなると思います。ビワ温灸器を使うことができればよいのですが、そうでない方にはこういった方法も活用していただければ効果があるだろうと思います。
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（ 『ビワと健康』 ２０２０年１２月１５日号）
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